親族相盗例

【ざっくり説明すると…】


→家族間での盗みも

「窃盗罪」が成立する


→一定の範囲の家族の盗みは

例外的に処罰されない


→でも、トラブルのもとだから

盗んだらダメですよ



先日、テレビ番組で、

日常生活の中でうっかり

やってしまいそうな行為が

有罪になるのか

無罪になるのかについて、

僭越ながら

解説させていただきました。


事例がたくさんあり

放送では解説しきれなかったので

各事例について何回かに分けて、

わかりやすい言葉で

噛み砕いて説明したいと思います。




今回は「奥さんのへそくりを

勝手に使ったら罪になるのか」です。




結論が難しいので

先に説明すると

“犯罪自体は成立するけど

処罰はされない”

ということになります。


窃盗罪の形式的要件を満たすので

罪は罪なんだけど、

家族間の盗みの場合は、

刑務所に行ったり

罰金を支払ったりする必要がない、

ということです。



順を追って説明します。


まず、家族のモノであっても

「他人の財産」になりますので、

家族の間で盗みを働いた場合、

それは立派な「窃盗罪」になります。


ですので、

犯罪自体は成立します。



もっとも、一緒に住んでいる家族の中で

「これは誰のモノか」というのが

あまり決まっていない場合も多いですよね。


たとえば

夫婦で買った掃除機、

子供2人のためにプレゼントしたオモチャ、

家族みんなで使っているゲーム機など。


すごく曖昧(あいまい)ですよね。


そうなると、家族のみんながみんな、

「これは私のモノだからね!」と

取り合いになることも多いですよね。


一定の家族の間では

そういったトラブルも多いのかもしれません。



そんなトラブルが発生するたびに

家に警察や裁判官が入ってきて

「これはお姉ちゃんのモノだ!」

「これはご主人のモノです、奥さんのモノではありません。」

なんて、イチイチやっていたら

警察や裁判所がパンクしてしまいます。



そこは、「家族のことなんだから

家族の中で解決してよ…。」

と思うわけです。



そこで、刑法は

・配偶者

(自分の奥さん、旦那さん)、

・直系血族

(お父さん、お母さん、おじいちゃん、おばあちゃん、子供、孫 など)、

・同居の親族

(一緒に住んでいる兄弟姉妹、おじ、おば、おい、めい など)

のモノを盗んでしまった場合は

処罰を受けるが免除されることになります

(刑法244条1項)。


いわゆる

「法は家庭に入らず」

というやつです。



ですので、

奥さんのへそくりを

盗んで使ってしまった場合、

一応、「有罪」になります。


ですので、気を付けることには

変わらないですので

やはり

へそくりを取るのはよくありませんね。




奥さんのへそくりを

勝手に使ったら罪になってしまう理由

ご理解いただけましたでしょうか。


次回は 「国の確認をもらわないで

南極に行ったら罪になるのか」

について

わかりやすい言葉で

噛み砕いて説明したいと思います。