盗品買取

【ざっくり説明すると…】


→盗まれたモノであると知りながら

買い取った場合には犯罪になる


→盗まれたモノとは知らずに

リサイクルショップから買ったお客さんは

犯罪にはならない


→モノを盗まれた被害者は

盗まれてから2年間であれば取り戻せます!




先日、テレビ番組で、 

「盗まれたモノの買取りをお願いされた

リサイクルショップが

モノを安く買い取っていた」という

ニュースについて

僭越ながら 解説させていただきました。 


この問題は非常に複雑ですし

ためになるポイントもいくつかありますので

刑事責任と民事責任の観点から

わかりやすい言葉で

噛み砕いて説明したいと思います。




当たり前ですが

リサイクルショップは

盗まれたモノを

(犯人からじゃなくても)

買い取って販売してはいけません。


リサイクルショップを行うには

古物営業(こぶつえいぎょう)といって
国の許可が必要になってきます
警察で手続をすることになります。



気を付けなければいけないのは
実際にお店を構えてない場合でも
許可が必要だ、ということです。

ですので
ヤフオクやメルカリなど
気軽にモノを売り買いできるアプリで
定期的にたくさんのモノを
出品している人がいましたら
許可をもらう必要がありますので
注意してくださいね。

月に3〜4個くらいであれば
まったく問題ありませんが、
いわば
“ビジネスとしてやっている”
と判断されちゃうような場合には
警察にちゃんと
許可をもらう必要があると思います。



さて、今回の場合は、
盗まれたモノを
リサイクルショップが買い取って
売っていた場合、
どのような犯罪が成立するかです。

「盗品等有償譲受罪」
(とうひんとう
ゆうしょうゆずりうけざい)
という犯罪があります
(刑法256条2項)。

盗品等有償譲受罪を
わかりやすい言葉で
噛み砕いて説明すると、

(1)盗まれた財物を


(2)お金で買い取った場合には


(3)1ヶ月~10年の間で

裁判所が決めた期間、

刑務所に入って働いてください

または

1万円~50万円の間で、

裁判所が決めた金額の

罰金を払ってください


ということになります。



リサイクルショップは、
お客さん(窃盗犯人)が
持ってきたモノについて、
「これは盗まれたモノだな…」
と知りながら、
それを買い取ってしまった場合には
犯罪となってしまいます。

買い取った場合だけでなく

タダでもらった場合も

罪になりますし、

もらうだけじゃなく

盗まれたモノを

保管したり、

お願いされて持ち運んだり

したとしても

罪になってしまいます。


これはリサイクルショップに

限ったことではありません

お店をやっていない皆さんも

「これって盗まれたモノだけど

もらってくれない?」

と言われて

もらっちゃった場合には

犯罪者になってしまいますので

注意してくださいね。




さて、それでは
盗まれたAさんのモノが置いてある
リサイクルショップで、
新たなお客さんであるBさんが
それを盗まれたモノとは知らずに
買ってしまった場合、
Bさんは犯罪者になってしまうのでしょうか。



この場合には、
Bさんには
犯罪は成立しません。

なぜなら、
犯罪が成立するためには

「犯罪をしてやるぜ!」という意思

(=故意)が必要だからです。



Bさんは

盗まれたAさんのモノとは知らずに
買っちゃったワケなので
故意がありません
ですので、
犯罪は成立しないんですね。

当然、お金を支払って

その盗まれたAさんのモノを

買ったわけですから、

基本的には
その盗まれたAさんのモノは
買ったBさんのモノになります。

これを難しい言葉で
「即時取得」(そくじしゅとく)
といいます(民法192条)。




ですが、
ここで問題が生じますよね。

今出てきた登場人物の中で1番、

損をしてるのは誰でしょうか。



もちろん、
モノを盗まれてしまった
Aさんですよね。

盗まれたモノが
まだリサイクルショップに残っていたら
取り返すことができるのに、
たまたま売れちゃった場合
(リサイクルショップで
Bさんが買っちゃった場合)、
取り返すことが
できなくなってしまうのであれば、

Aさんは

本当に踏んだり蹴ったりですよね。




しかし、一応
法律では救済措置もあったりします。


民法には、


(1)モノを持っていたAさんは


(2)盗まれたり

失くしたりした時から2年間であれば


(3)現在モノを持っているBさんから

取り返すことができます


(4)ただし、Bさんが

リサイクルショップなどのお店で

盗まれたモノと知らずに

買っていた場合には

さすがにBさんがかわいそうなので

Bさんにお金を支払ってください


というルールがあります。


これによりAさんは
お金を支払うことにはなりますが、
自分が盗まれた大切なモノを
取り戻すことができるんです。

もともとは自分のものなのに
なぜお金を
支払わなきゃいけないんだ、という
悔しさは残ると思います。。。

しかし他方で
何も事情を知らないで
その盗まれたモノを
新たに買ったBさんも
保護をしていく必要があるんですね。

保護しないと、
いつまで経っても
これが自分のモノになるのか、
いつかは取り返されてしまうのか、
全然わからないという
不安な状況のままに
なってしまいます。

ですので
モノを盗まれたAさんと、
事情を知らないで
そのモノを新たに買ったBさん、
両者の利益のバランスを
図る必要があるんですね。


でも、
モノを盗まれたAさんとしては、
支払ってしまったお金だったり
2年経ってしまって
取り戻せなくなったモノの
弁償をしてもらいたいですよね。

その場合には、
そのモノを盗んだ犯人や、
リサイクルショップなどに対して
弁償を請求していくことに
なると思います。



モノを盗まれた場合の
関係者の救済については
非常に難しいので、
トラブルに巻き込まれないように
注意してくださいね。




なるべく難しい言葉を
使わないようにと心掛けるがあまり
逆にわかりにくくなって
しまったかもしれません。 
 
また
専門家の方、
法律の勉強をされている方にとっては
あまりに稚拙で言葉足らずで
説明不足であることも
重々承知しております。
 
ただ、このブログのコンセプトは
まったく法律を知らない方にとって
少しでも興味を持っていただく
きっかけになればと思い
始めたものですので
どうかご容赦いただけばと思います。




Lawyer Takahiro Kitagawa

弁 護 士 北 川 貴 啓