不適切動画SNS投稿
【ざっくり説明すると…】
→お店の信用を下げてしまい、
仕事の邪魔をしていることになるので
犯罪行為になる
→お店に対して
とんでもない金額の弁償を
しなければいけない可能性もある
→軽いノリでSNSに投稿したら
人生終了するかもしれませんよ!
昨日、テレビ番組で、
社会問題として
大きく取り上げられている
飲食店などの従業員が、
イタズラ半分で
不適切な動画を録画して
SNSなどに公開することの
問題点について
僭越ながら
解説させていただきました。
せっかくなので
今回の一連の問題について
刑事責任と民事責任の観点から
わかりやすい言葉で
噛み砕いて説明したいと思います。
刑事責任と
民事責任の違いについては
コチラをご覧になってみてください
簡単に説明すると
刑事責任は
警察・検察を相手とする有罪・無罪の話、
民事責任は
当事者間の弁償の話、だと思ってください。
まずは刑事責任です。
今回、取り上げられた
SNS動画のほとんどは
飲食店等、お店側の信用を
大きく損ねる内容のものであり、
また、
お店側が正常に行う仕事では
考えられない内容のものでした。
従業員がやった
イタズラ行為について
考えられる犯罪としては、
刑法233条、234条の
「信用棄損罪」
(しんようきそんざい)
「業務妨害罪」
(ぎょうむぼうがいざい)
が考えられます。
わかりやすい言葉で説明すると、
(1)ウソの事実を広めたり
(2)相手を騙したり勘違いさせたり
(3)相手の行為を邪魔したりして、
(4)相手の社会的信頼を落としたり
(5)相手が続けている活動を邪魔した場合には、
(6)1ヶ月~3年の間で裁判所が決めた期間、
刑務所に入って働いてください
または
1万円~50万円の間で、
裁判所が決めた金額の罰金を払ってください
ということになります。
今回、問題となっている動画の中には
お客さんに提供する商品や食材を
ゴミ箱に入れたり、
クチに入れたりしていたんですね。
これでは、お店側としては
いつも通りの状態、クオリティで
提供することが
できなくなってしまいますよね。
これにより、お店側の信用を下げていますし
なにより、
お店側が商品を提供する行為を
邪魔しているということになります。
もうひとつ、考えられる犯罪は
刑法261条の
「器物損壊罪」
(きぶつそんかいざい)です。
わかりやすい言葉で説明すると、
(1)他人のモノについて、
(2)そのモノの使い勝手を
悪くするような危害を加えた場合、
(3)1ヶ月~3年の間で裁判所が決めた期間、
刑務所に入って働いてください
または
1万円~30万円の間で、
裁判所が決めた金額の罰金を払ってください
ということになります。
「損壊」というと
商品の形が壊れてしまった場合を
なんとなくイメージしてしまいますが
そんなことはありません。
たとえば、今回の不適切な動画では
商品であるペットボトルを
従業員が舐めたりしていたみたいなんですね。
この場合も
商品自体は壊れていないですが、
“そのモノの使い勝手を
悪くするような危害を加えている”
(=感情的に、その商品を利用したいとは思わない)
といえますので
私は「損壊」に該当するのではないかと思います。
ですので、捜査機関としては
大きく分けて
この2つの犯罪で
調べていくことになるのかな、
と思います。
次に、民事責任です。
今回の不適切な動画の投稿が
きっかけとなって
ある会社では
株価がめちゃくちゃ
下がってしまったみたいですね。
さて、この場合
お店側としては、
従業員に対して
「お前のせいで売上げが下がった!」
「今回の件で株価が大暴落した!」
と主張して、
何千万円もの弁償を
請求できるのでしょうか?
理屈の上では
弁償を請求することは
可能だと思いますが、
おそらく、お店側としては
そのようなアクションを起こすことは
考えにくいのではないかと思います。
その理由のひとつは、
イタズラ行為をした従業員が
そんな大金を弁償できるほど
お金を持っているとは
考えにくいからです。
もし仮に、お店側が裁判で
勝ったとしても
自動的にお金が
手に入るわけではありません。
負けてしまった従業員が
キチンと約束どおり弁償しなければ
判決書は、ただの紙切れに
なってしまう可能性が高いです。
ですので、そのリスクを考えると
お店側が従業員から
何千万円もの大金をもらおうは
あまり考えてこないと思います。
もうひとつの理由としては、
「今回の不適切な動画の投稿」と
「売上げや株価の減少」との間に
相当因果関係、つまり
直接の関連性があることを
証明するのが面倒だからです。
「いやいや、
今回の件があったから
売上げが下がったんだし、
株価が大暴落したんじゃないか!
誰がどう見てもそうだろ!」
というか意見は
ごもっともだと思います
(個人的には私もそう思います…)。
ですが、
お店の売上げが下がった原因は、
その日の天気が
悪かったせいかもしれないですよね。
株価が大暴落したのは
どこかの国の大統領が
Twitterでつぶやいたことが
原因かもしれないですよね。
このように、
お店の売上げや株価って
色々な要素が複雑に合わさって
上がったり、
下がったりするわけです。
そういった細かい事情を
いくつも挙げて
“今回の不適切な動画の投稿”と
“売上げや株価の減少”との間に
直接の関連性があることを
お店側が証明しなければなりません。
そうなると、お店側が、
“大金を持っていない従業員”に対して、
わざわざ、
たくさんの時間をかけて
お金を取る作業をしてくる可能性は
少ないのではないのかな、と思います。
やはり、お店側が従業員に対して
刑事責任や民事責任を
追及する理由としては、
「次に同じようなことやったら、
マジで許さないよ!」
という姿勢を
強くアピールからだと思います。
軽いノリでSNSに投稿することが
どれだけ悪い行為なのかを
わかってもらい、
再発防止を強く促すことが
主な目的だろうと思います。
不適切な動画を
SNSに投稿することの問題、
ご理解いただけましたでしょうか。
今は、ストーリーズなど
24時間で投稿が消える
お手軽なものもありますが
「消えるから大丈夫だよね!」
と安易に考えると
本当に本当に危険ですよね。
軽いつもりで録画した動画が、
人生を狂わせてしまうことが
ありますので
マナーを守って、
上手にSNSと
付き合わなければいけないですよね。
気を付けましょう!
Lawyer Takahiro Kitagawa
弁 護 士 北 川 貴 啓

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