大量の氷

【ざっくり説明すると…】 


 →無料の氷であっても“財産”と考える


→氷をたくさん持ち帰ることは、

さすがにお店も納得していない


→持ち帰る量は必要な範囲にしましょう


先日、テレビ番組で、

日常生活の中でうっかり

やってしまいそうな行為が

有罪になるのか

無罪になるのかについて、

僭越ながら

解説させていただきました。


事例がたくさんあり

放送では解説しきれなかったので

各事例について何回かに分けて、

わかりやすい言葉で

噛み砕いて説明したいと思います




今回は 「お店にある無料の氷を

たくさん持ち帰ったら罪になるのか」 です。



考えるべきポイントは2つあります。

・「ご自由にお持ち帰りください」と説明がある

・大量に持って帰る

という点です。



窃盗罪(刑法235条)というものは

必ずしも、

盗んだモノ自体に

財産的な価値があるかどうかは

あまり関係ありません。


ですので、

使用後の切手や、

恋人からもらった手紙

(切手や便箋としては

もう使えない)であっても

法律的には

“財産”と考えます。


ですので、お店が

無料で提供している氷であっても

立派な“財産”です。



さて、お店が

「自由に持って帰っていい」と

言っているのだから

氷をもらって帰ることは

フツーに考えると

“モノを盗んだ”ことにはならないような気がします。


しかし、よく考えてみてください。


なぜ、お店が無料の氷を

置いているかというと、

それはあくまで

お店で買った魚や肉、

冷凍食品などを

腐らせないために、

冷たい状態のままに

しておくために、

氷を使ってほしい、と

考えているのがフツーだと思います。


そのために氷を持って帰るのであれば

お店は納得しているので

氷を盗んだ、とはいえませんよね。


ですが、


そうであれば、それ以外の目的で

氷を持って帰ることは

お店としては

納得していないと思うのです。


つまり、お店が想定しているのとは

違うような理由で

氷を持って帰っていると

予想されるような場合

(=つまり、ものすごく大量の氷を

持って帰る場合)には

お店としても

「そんなに持って帰るなんて

さすがにOKしてないよ!」と

考えるわけです。


つまり、ものすごく大量の氷を持って帰ることは

お店側も納得していないのだから

勝手に持ち帰ることは

“財物を勝手に盗んだ”

と評価されることになります。



じゃあ、

「“ものすごく大量の氷”って

一体どのくらいだよ!」

ということになりますが

これはケースバイケースになります。


缶ジュース1本を買った場合と

マグロ1匹まるごと買った場合では

必要な氷の量が違いますからね。



過去には10キロ以上の氷を

持ち帰った人が逮捕されています

まぁ、そりゃあ10キロも持ち帰れば

逮捕されますよね。笑




窃盗罪になってしまうと、


(1)1ヶ月~10年の間

裁判所が決めた期間、

刑務所に入って働いてください


または


(2)1万円~50万円の範囲で

裁判所が決めた金額の

罰金を払ってください


ということになっています。



ですので、

「ご自由にお持ち帰りください」

と書いてあっても

ほどほどにしないといけませんね。




無料の氷を大量に持ち帰ったら

罪になってしまう理由

ご理解いただけましたでしょうか。


次回は

「偽札と知らずに使ったら罪になるのか」 

について

わかりやすい言葉で

噛み砕いて説明したいと思います。




Lawyer Takahiro Kitagawa

弁 護 士 北 川 貴 啓