法定相続

Twitterに 次のようなご質問をいただきました。 


 説明したいことが たくさんありますが まずは前提の相続と遺言に関して わかりやすい言葉で 噛み砕いて説明したいと思います。 


 相続というのは 簡単に言うと 誰かが亡くなったときに、 その家族が 亡くなった方の プラスの財産、マイナスの財産を まとめて引き受ける というものです。


 亡くなった人の財産は 基本的には 配偶者(妻、夫)と子供が 受け取る(=相続する) これがルールです。 


 有名な本が既にありますが みなさんがイメージしやすい サザエさん一家で 考えてみます。


 たとえば サザエさんが亡くなってしまった場合 サザエさんの持っていた財産は 誰が、どのくらいの割合で 相続するのでしょうか。 


 サザエさんの財産は 夫であるマスオさんが 2分の1相続し、 残り2分の1は子供で分けます タラちゃんは一人っ子なので 2分の1全部をタラちゃんが 相続します 

 (もし、タラちゃんに弟、妹がいたら その2分の1を3等分するので それぞれ6分の1です)。


 では、もし タラちゃんが生まれる前に サザエさんが亡くなってしまった場合 (=夫婦の間に子供がいない場合)は どうなるのでしょうか。


 この場合、 サザエさんの財産は 夫であるマスオさんが 3分の2相続し、 残り3分の1は親である 波平さんフネさんで 半分ずつに分けます つまり 波平さんフネさんがそれぞれ 6分の1ずつ相続します。


 では、もし タラちゃん波平さんフネさん 3人がいないときに サザエさんが亡くなってしまった場合 (=子供も親もいない場合)は どうなるのでしょうか。


 この場合、 サザエさんの財産は 夫であるマスオさんが 4分の3相続し、 残り4分の1は弟妹である カツオくんワカメちゃんで 半分ずつに分けます 

 つまり カツオくんワカメちゃんがそれぞれ 8分の1ずつ相続します。 


 このように 子供がいなければ親へ (もし、孫がいれば 「代襲相続」といって 孫が相続することになります) 親もいなければ兄弟へ といった優先順位で 相続することが 法律に決められています (民法900条)。


 さて、この法律で決められた 相続ルールより 優先されるものがあります。


 それが 「遺言」です。 法律的には “ゆいごん”ではなく “いごん”と読みます 「遺書」という言葉は 法律的には使いません。


 亡くなってしまう前に 遺言を書いていれば 全財産を 家族以外の人に渡すことも できるようになります。 


 亡くなった人の財産なんだから 誰にあげるかは 亡くなった人が自由に決められる ということです。


 この遺言、何パターンかあるのですが その中でよく使うモノとして 「自筆証書遺言」 (じひつしょうしょいごん) と 「公正証書遺言」 (こうせいしょうしょいごん) という2つがあります。 


 自筆証書遺言 というのは文字の通り 自分で書いた遺言です。 


 公正証書遺言 というのは 公証役場という場所で作成する 手続がちょっと面倒で 費用のかかる遺言です。 


 自分で書く遺言のほうが 時間もかからないし、ラクですよね 

 ですので 自分で遺言を書いて 残しておきたいという方、 結構いらっしゃると思います。


 ただし、 自分で書いた遺言が 法律的に有効になるためには 次のように いくつか条件があります。


 (1)日付、名前、文章全部を 自分で手書きすること 

 (2)ちゃんと自分の名前の ハンコを押すこと 

 (3)1つの紙に 2人以上の遺言を書かないこと


 このよう条件を満たしていれば 有効な遺言となるのです。


 逆に、この条件を1つでも 満たしていない場合、 本当の気持ち・意思が ちゃんと書いてあっても 法律的には無効になってしまいます 

 たとえば スマホのメモ書きや録音 ビデオメッセージなどでは 無効です。


 なので これから遺言を残しておこうかな、と 思っている方がいらっしゃいましたら 注意が必要です。 


 相続のお話 自筆証書遺言のお話 ご理解いただけましたでしょうか。


 次回は 公正証書遺言について わかりやすい言葉で 噛み砕いて説明したいと思います。

Lawyer Takahiro Kitagawa

弁 護 士 北 川 貴 啓