むち打ち症

前回の続きです。


 Twitterの ご質問内容にあった 交通事故に遭い むち打ち症になってしまった という事例で 後遺障害というものを わかりやすい言葉で 噛み砕いて 説明したいと思います。 


 まず、後遺障害 (こういしょうがい) についてです。


 法律的には 「後遺症」とは言わずに 「後遺障害」 といいます。


 この後遺障害、 言葉の感じからすると たとえば 身体の一部が動かなくなるような 重い症状が残ってしまう イメージをしがちですが、 そうではありません。


 わかりやすく 噛み砕いて説明すると “このまま治療を続けても 劇的に回復することが困難な状態“ ということです。 


 ですので むち打ち症で チクッとした痛みが 残ってしまった場合でも 後遺障害ということもあります。


 むち打ち症の場合、 事故後、首が痛いので マッサージなどの 治療を続けて行うのが一般的です。 


 治療を数ヶ月間、続けていると 医師から 「これ以上、治療を続けても あまり良くならないから 治療を終了しますか?」 と言われるのではないかと思います。


 つまり、医師としては “このまま治療を続けても 劇的に回復することが困難な状態“ になってるかもしれないと 判断していることになります。


 そのときに、 もし、通院期間が 6ヶ月以上であるのなら 後遺障害診断書というものを 書いてもらえないか 医師にお願いしてみましょう。


 簡単に説明すると “このまま治療を続けても 劇的に回復することが困難な状態“ に該当すれば 相手からもらえる弁償金額が ググッと増えます。


 ですので、 痛みが残らないほうが もちろんいいのですが、 単純に もらうお金のことを考えるのであれば “このまま治療を続けても 劇的に回復することが困難な状態“ になっていたほうがいいんです。


 この “このまま治療を続けても 劇的に回復することが困難な状態“ に該当するかどうかを ジャッジする 専門機関があります

 その専門機関に レントゲン画像や 診断書などの資料を 提出する必要があるのです。


 その提出資料のひとつとして 医師に 後遺障害診断書を 書いてもらうことになります。


 そして 専門機関が “このまま治療を続けても 劇的に回復することが困難な状態“ であると ジャッジした場合には 弁償金額アップ! “まだ痛いのは気の毒だけど 痛みが今後ずっと残るほどではないな” とジャッジした場合には 後遺障害“非該当”となります。 


 ですので 専門家である医師が書いた 後遺障害診断書というのが 重要なカギを握っているわけです。


 さて、次に むち打ち症についてです。 


 むち打ち症というのは 事故の衝撃で 頭部がガン!と振られてしまい 頭部を支えている首が 一瞬にして伸ばされることで 痛みが発生するものです。


 衝撃で首がムチのように ビューン!となることから そのような名前で 呼ばれているみたいです。


 このむち打ち症、 事故直後すぐに 痛みが出ず、 1~2日後に初めて 違和感が 出てくることもあるので 注意が必要です。


 さて、むち打ち症も “このまま治療を続けても 劇的に回復することが困難な状態“ に該当する可能性があると お伝えしましたが ひとつ、厄介な点があります。


 それは 他覚所見がない ということです。


 他覚所見がない というのは “第三者から見て ケガの具合や痛みが 本当に残っているのか わかりづらい“ ということです。 


 たとえば 骨折して痛いかどうかは レントゲン画像を 見ればわかります。 


 これと違い むち打ち症の痛みは、 レントゲンやMRIなど 画像ではわかりづらいものが 圧倒的に多いです。 


 今後ずっと続く痛みなのか それとも いずれ回復するのかは 本人の体内のことなので 本人しかわかりません。 


 でも “このまま治療を続けても 劇的に回復することが困難な状態“ に該当するか ジャッジするのは あくまで専門機関です。 


 その専門機関としては むち打ち症の痛みの程度が どのくらいなものであるか 医師の後遺障害診断書を 判断要素として どうしても重要視するわけです。 


 なので、繰り返しになりますが 弁償金額アップのためには 医師に丁寧な診断書を 書いてもらうことが大切です。 


 あともうひとつ、 弁償金額アップを狙う 重要なポイントがあります。


 それは、 できるだけ多い回数、 長い期間、通院をすること です。


 たとえば、むち打ち症で 10回通院したAさんと 100回通院したBさんがいた場合 どっちがツラそうで 重そうな症状だったと感じるでしょうか。


 Aさんの10倍も多く通院した Bさんのほうが ツライむち打ち症のような 気がしませんか。 


 後遺障害に該当するか ジャッジする機関も 同じように考えると思います。


 「たくさん通院しているってことは きっと痛みも 相当大きかったんだろうな、 後遺障害もきっとあるんだろうな」 と考えやすくなります (もちろん、専門家なので 他の要素も併せてジャッジしますから 絶対的な理由には ならないですけど…)。 


 ですので 丁寧な後遺障害診断書 に加えて、 医師と相談しながら しっかり通院していくことが 大切になってきます。


 むち打ち症と後遺障害 ご理解いただけましたでしょうか。 


 次回は 自動車保険の中のお得な特典、 弁護士費用特約について わかりやすい言葉で 噛み砕いて説明したいと思います。

Lawyer Takahiro Kitagawa

弁 護 士 北 川 貴 啓