犯人隠避罪の教唆犯
前回の続きです。
力士は “(無免許運転の)犯人の 身代わりになりました罪” を “お願いしました罪” になるということを説明しました。
順を追って わかりやすい言葉で 噛み砕いて説明します。
まず、力士は 無免許運転という犯罪を してしまいました。
つまり犯人です。
それなのに奥さんは、 嘘をついて 「運転していたのは私です!」 と言い、 力士は運転していない (=犯罪をしていない) ことを警察に言いました。
“犯人の身代わりになりました罪”の 条文(刑法103条)を 噛み砕いて説明すると (1)犯人に (2)隠れ場所を与えたり (3)その他の方法で 逮捕されないように助けた人は (4)1ヶ月~3年の間で 裁判所が決めた期間、 刑務所に入って働いてください (5)または 1万円~30万円の範囲で 裁判所が決めた金額の 罰金を払ってください ということになります。
したがって、 力士が犯人であることを 隠した奥さんには “犯人の身代わりになりました罪” が成立します。
奥さんは力士のことを 良かれと思って助けたのに 自分まで 犯罪者になってしまいました。
さて、次は問題の力士です。
実際に犯人を隠したのは 奥さんですが その奥さんに身代わりを お願いしたのは 力士本人でした。
奥さんは力士をかばって 身代わりになったため 犯罪者になっちゃいました
それなのに 身代わりをお願いした力士には 無免許運転の罪しか 成立しないのは おかしいですよね。
しかし刑法は 他人に対して 犯罪をやってほしいと お願いした人も ちゃんと罰が 与えられるようにできています。
それが 教唆 (“犯罪をお願いしました罪”) です。
“犯罪をお願いしました罪”の 条文(刑法61条)を 噛み砕いて説明すると (1)他人に (2)お願いして (3)その人に犯罪をさせた人は (4)その人がやった犯罪と 同じ範囲で 裁判所が決めた罰を受けます ということになります。
つまり、奥さんに対して 「自分の身代わりになってくれ」と お願いした力士は “犯人の身代わりになりました罪” と同じ範囲 で罰を受けることになるのです (力士とまったく同じ 期間や金額になるとは 限りません)。
結局、力士は 「自分が無免許運転をしました」 と警察に正直に話していれば 無免許運転の罪だけで 済んだのですが 奥さんに身代わりを お願いしたせいで 奥さんを犯罪者にしてしまうばかりか 自分は
無免許運転の罪
+ “お願いしました罪”
の2つの犯罪者になってしまった ということになります。
犯人隠避罪の教唆犯 ご理解いただけましたでしょうか。
次回、この件について
少し補足をさせていただきます。
0コメント